アメリカにある『死の湖』ソルトン湖へ行ってみた。

かつてこのブログではカリフォルニアの内陸部にある砂漠の芸術『サルベーションマウンテン』への行き方をご紹介しましたが、西海岸側(ロサンゼルスやサンディエゴ等)からこのサルベーションマウンテンへ向かうと、ほぼ必ずと言っていいほど目にする巨大な湖があります。

 

幅が25km長さ50km。その巨大な湖の名前はソルトン湖(Salton Sea)。

 

実はこの湖、1905年にコロラド川の氾濫・洪水によって出来てしまった巨大な水たまりなのです。

水たまりというにはあまりにも巨大すぎるため、英語ではSalaton Sea(ソルトン海)、日本語でソルトン湖という呼称となっております。

 

さて、私自身、サルベーションマウンテンに観光しに行ったときにこのソルトン湖の近くを通ったわけですが、遠くから見た時の美しさと、実際に近くに行ったときの絶望感(汚さ・臭さ・空虚感・廃墟感)のギャップが物凄くて衝撃を受けたことをよく覚えています。

 

その後このソルトン湖について調べてみると、その誕生秘話(なぜ出来たか)からリゾート地としての栄枯盛衰の歴史、そして現在と未来の話など、実に興味深い文献や映像がたくさん見つかりました。

 

そこでこの記事では、私が調べてきたソルトン湖に関する情報(現在・過去・将来)をなるべく端的にわかりやすくまとめていこうと思います。

 

 

 

 

ソルトン湖ってこんな場所

最初にも書きましたが、私がソルトン湖を見つけたのは、ロサンゼルスからサルベーションマウンテンにレンタカーで向かう道中のこと。

もう少しでサルベーションマウンテン!という頃合いに、

「あれ?海が見えてきた!」

「いや内陸なんだから海じゃなくて巨大な湖でしょ!」

なーんて会話を友人とした経験があります。

 

早くサルベーションマウンテンに辿り着きたかったので、行きはスルーしましたが、日が暮れかけた復路に立ち寄ってみることにしました。

 

こちらがそのソルトン湖です。

もう日が暮れかけていて暗いのが申し訳無いのですが、見た目は完璧に海です。少しだけ波も立っていました。

ただ、見渡すと対岸に山や陸が見えているため、なるほどこれは湖だな、ということがわかります。

色々な種類の鳥がほとりで一休みしていて、夕焼けの美しい色合いと相まって、なんだかすごく素敵な場所…。

しかし、たしかに見た感じは美しい景色ではあるのですが、浜に近づいていくと妙な違和感が…。

 

まず、第一印象として臭いです。

耐えきれないというほどではありませんでしたが、ちょっとしたイカ臭さや腐敗臭が入り混じったような、微妙な匂い。

 

それもそのはず、この湖の波打ち際には大量の魚の死骸が転がっているからです。

そして、遠くから見ると砂のように見えた浜辺も、実は砂ではなくフジツボ(貝殻?)の破片。

私サンダルで行ったのですが、もう痛くて痛くてまともに歩けません。靴で行くのが正解。

この時点でソルトン湖に関する情報を全く知らなかった私は、その景観の美しさと、大量の死骸や異臭、そして人の気配が全く無いこの不気味な湖良い意味でも悪い意味でも圧倒されました。

結局最後まで「あの湖は何だったんだ…?」という腑に落ちない印象のまま帰路に就いたのです。

 

 

 

 

ソルトン湖が出来てしまった理由

もともとソルトン湖はソルトン・シンクという、水の無い低地でした。

海水面より70m~100mほど低い土地だったのです。

低地であるが故に、周辺の川の氾濫や洪水が起きると、しばしば大きな水たまり(湖)が出来ました。

湖が出来ては干からび、雨が降って洪水・氾濫が起き、また湖が生まれ、また干からび…というサイクルが数百年単位で繰り返されていたことが、地質学研究により明らかになっています。

そんな果てしなく長いサイクルの過程で、現在のソルトン湖の姿が存在している、というわけです。

 

とはいえ、現在のソルトン湖は、実は全くの自然によって出来上がったものではありません。

人間のたった一度の過ちによって出来上がった人工湖なのです。

というのも、ソルトン・シンク辺りは砂漠地帯ですから、農業などをしようとすると、どうしても水が必要になります。

そこで、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、農作物を育てるための灌漑(水路)が作られ、コロラド川という巨大な川から水を引っ張ってくることにしたのです。

さらにCalifornia Development Companyという企業によって、水路の拡張が図られ、より巨大な灌漑で、多くの水が運べるようになりました。

しかしながら、大きな流路を作ったにも関わらず、水門を設置しなかったのです。

水門が設置されないと、水量調節や取水、排水が満足に出来なくなってしまい、災害時などに水が氾濫してしまう恐れがあります。

そして案の定、それは現実となりました。

1905年、コロラド川の氾濫・洪水が起き、巨大な用水路からソルトン・シンクへ大量の水が流れ込みます。当然水門が設置されていなかったため、人類には成す術が無く、約2年間に及び、洪水状態が続きました。

その結果として出来上がってしまったのが、ソルトン湖です。

より良い暮らしを送るために、人や企業がコロラド川を利用し生活用給水・農業用灌漑を作り上げたが、詰めが甘かった(非常事態を予期していなかった)ために出来上がってしまった湖、それがソルトン湖なのです。

 

 

 

 

リゾート地としてのソルトン湖

ソルトン湖がリゾート地だった頃

偶然出来上がってしまった“巨大な水たまり”ソルトン湖ですが、場所が砂漠地帯であり乾燥地帯なのだから、いくら水量が多いといえども、「いずれは蒸発してまた元の干からびた低地に逆戻りだろう」と、多くの人が当時は考えていました。

しかし、10年経っても20年経っても、一向に水は無くなりません。

そこで、当時の人々が考えたのは、「この砂漠の中にポッと出てきた湖を利用して、多くの人々が集まる景勝地として開発していこうじゃないか!」という、いかにもアメリカ人らしい発想による「ソルトン湖・リゾート地計画」です。

結論から言うと、この試みは大成功

1920年代から徐々に開発が進められ、1950年代から1960年代にかけて、ソルトン湖は全米でも有数の景勝地として有名になりました。

水泳やクルージング、釣り、パーティ、食事、宿泊、そして大型ショッピングモールでのショッピングなどが楽しめるため、多くの人が訪れました。

有名どころで言うと、フランク・シナトラやビーチボーイズ、アイゼンハワー大統領といったセレブ達も訪問したことがあるそうです。

当時は「砂漠の奇跡」「水がたくさんあるパームスプリングス」なんていう形容もされていたみたいで、まさに一世を風靡した一大リゾート地と言えるでしょう。

 

しかしながら、そういた栄華の日々もそう長くは続きません。

ソルトン湖を作り出してしまった時のように、またもや人類は未来を予測できずに、ソルトン湖を「死の湖」へと変貌させてしまうことになるのです。

 

 

 

 

ソルトン湖の荒廃と現在

ソルトン湖はもともと川の水から成っていたのですが、流れ込んでくる水に含まれている塩や、土壌に含まれる塩により、塩分がどんどん蓄積されていきました。

通常の湖ですと、川から流れ込んでくるポイントと、さらにその先に流れ出していくポイントがあるはずなのですが、このソルトン湖はご存知のとおり窪地に偶然出来た水たまりですから、当然水が流れ出ていく先はありません。

となると水が無くなるのは蒸発による消失のみ。

蒸発では塩分は無くなりませんから、水の蒸発と水&塩の流入が繰り返されると、当然水の量は変わらず、ただただ塩分濃度だけが濃くなってしまいます。

時間をかけて蒸発と流入が繰り返されていくうちに、気づいたときには海水よりも濃い塩分濃度になってしまいました。

魚も多く住み着いていましたが、ほとんどが絶滅し、唯一残ったのは生命力の強いティラピアのみ。(そのティラピアでさえも今では浜辺に死骸が大量に転がっているレベルですが)

生物が生きていけない塩分濃度の湖ですから、当然そこには死骸による腐敗臭や藻類などが大量発生し、見た目も中身も悲惨な状態になってしまったのです。

 

徐々にリゾート地としてのソルトン湖は衰退していき、観光客は誰も訪れなくなり、やがてビジネス目的の企業も撤退し、現地に住む人間もほとんどソルトンの地を去っていきました。

そして、1970年代には誰もいなくなり、現在のソルトン湖のようになってしまったのですね。

 

ソルトン湖の現状はさきほど書いたとおりですが、湖や浜辺の惨状は勿論のこと、その周辺にもかつて栄えていたであろう建物や船といった人工物の面影が、廃墟として虚しく取り残されています。

今では訪れる人といえば周辺のわずかな住民や、私のようにたまたま通りがかった通行人、そして廃墟好きの観光人くらいです。

遠くから見た美しさとは裏腹に、近寄ってみると顔をしかめたくなるような異臭と、何とも言えない物悲しさがあります。

人類の賢くも愚かな歴史が目に見えるようで、色々と考えさせられる場所です。

 

 

 

 

ソルトン湖の今後

完全に見捨てられたかのように見えるソルトン湖ですが、何とかして修復し有効活用しようという流れが、カリフォルニア州議会を中心に出来てきているようです。

2008年に提出された『ソルトン湖修復計画』の内容を端的に説明すると、2035年頃までに堤を土盛土手沿いに造ってソルトン湖を囲い込み、規模を縮小。

囲い込まれた場所以外の水は、蒸発させて塩田として機能させる、とのことです。

湖の大きさを縮小することによって、水質や土壌の管理をしやすくすることと、手に負えないその他大部分を「塩田」という形で活用しよう、という計画のようです。

これが上手くいくかどうか、そしてそもそも本当に実行できる(している?)のか否か、現段階ではわかりませんが、その答えは今から数十年後にはわかります。

なんとかこの計画を実行し成功させて、人類の悲しく儚い行いを払拭してほしいな~と、個人的には考えています。

 

 

 

 

おわりに

今回は、かつてリゾートとして栄えた『死の湖』ソルトン湖について書いてみました。

このソルトン湖をメインに据えてカリフォルニアを訪れる人はほとんどいないと思いますが、最初に書いたようにサルベーションマウンテンまで行く場合、かなりの確率でこのソルトン湖を見ることになると思います。

この記事を読んだ方で、もしサルベーションマウンテンやソルトン湖へ足を運ぶ方・行ったことがある人がいらっしゃれば、ぜひソルトン湖の現状などをコメントしていただけると嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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